受入れの実務

相談や苦情を受ける窓口、どう作るか

相談や苦情を受ける窓口、どう作るか

受け入れた本人が働き始めると、次に決めたいのが「困ったことがあったとき、誰にどう言えばいいのか」です。特定技能では、相談や苦情への対応が義務的支援(支援計画に必ず含めて実施する支援)の一つに位置づけられています。とはいえ、専用の部署を新設する話ではありません。まず決めたいのは、誰が・いつ・どの言語で受けるかの3つです。出入国在留管理庁の運用要領に沿って、その3つを決めて動かす手順を整理します(2026年8月時点の公表内容にもとづきます)。

窓口は「あるか」ではなく「いつ受けられるか」で決まる

制度の根拠は特定技能基準省令第3条第1号トです。本人から職業生活・日常生活・社会生活に関する相談または苦情の申出を受けたときに、遅滞なく適切に応じ、助言や指導その他の必要な措置を講じることが、支援計画の記載事項とされています。

この体制は、来日前に本人へ伝える内容にも入ります。運用要領別冊は、事前ガイダンスで情報提供しなければならない事項の一つに「相談又は苦情の申出を受ける体制」を挙げ、その例として「○曜日から○曜日の○時から○時まで面談・電話・電子メールの方法により相談又は苦情を受けることができること等」を示しています。制度が見ているのは窓口の有無ではなく、曜日・時間帯・手段が書けるかどうかです。

決めること 運用要領の定め 決め方の例
誰が 支援担当者の氏名・電話番号・メールアドレス等を本人に伝える 担当1名+不在時の代理1名
いつ 勤務形態に合わせて1週間当たり勤務日に3日以上、休日に1日以上対応し、相談しやすい就業時間外(夜間)などにも対応できることが求められる 平日3日は日中、土曜は午前、夜間はメール
どの言語で 本人が十分に理解することができる言語により実施することが求められる 母語対応の可否と通訳の手配先を先に決める

出典:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領 別冊」

本体の運用要領は、相談対応について「必ずしも24時間の対応が即時に可能であることまでを求めるものではありません」と書いています。まず求められているのは、受けられる時間帯が決まっていることです。そのうえで別冊は、事故の発生等緊急時の連絡先を設け、基本的にいつでも連絡が受けられる体制を構築することが望まれるとも書いています。時間帯を決めたら、次は緊急時の連絡先を1つ足す——この順で伸ばせます。

支援を登録支援機関に委託する場合は、書きぶりが一段強くなります。別冊は、登録支援機関が受入れ企業における特定技能外国人の勤務時間に合わせて相談時間帯を適切に設定しなければならないとしています。夜勤や早朝がある職場なら、そのシフトに合う時間帯を委託先と擦り合わせます。担当者の決め方は支援責任者と支援担当者の決め方で整理しています。

受けたあとに何をするか

窓口は受けて終わりではなく、そのあとの動き方まで含めて義務的支援です。定めは次の順に読めます。

  1. 遅滞なく適切に応じる——申出があったら、まず受け止める
  2. 助言・指導を行う——相談等の内容に応じて必要な助言、指導を行う必要があります
  3. 適切な機関を案内し、同行する——必要に応じ、相談等の内容に対応する適切な機関(地方出入国在留管理局、労働基準監督署等)を案内し、同行して必要な手続の補助を行わなければなりません

通院や入院等の際にも、必要に応じて同行して手続の補助を行わなければならないとされ、その際の交通費や日当などの経費は受入れ企業等が負担しなければなりません。交通費の精算方法を社内の経費ルールに1行足しておくと、当日に迷いにくくなります。

対応にあたっては個人情報の保護に努めること、本人が相談等の内容を理由に職場での待遇等において不当な取扱いを受けないようにすることが示されています。窓口の案内文に「相談した内容で不利益な扱いはしません」と添えると、この趣旨が伝わります。相談・苦情への対応は、離職が決まった後も、特定技能雇用契約がある間は行うことが求められるとされています。退職・帰国の手続チェックリストに「契約が終わるまで窓口は開けたまま」と1行足しておくと、担当者が代わっても引き継ぎやすくなります。

言葉は「応急」と「本番」を分けて用意する

相談対応は、本人が十分に理解することができる言語で実施することが求められます。運用要領別冊は、通訳の確保が困難な場合に、応急的に同僚の外国人就労者を通訳に充てる、または翻訳機や翻訳アプリを使用することも差し支えないとしています。一方で、プライバシー保護および正確性の観点から、詳細な聞き取りについては通訳を確保したうえで適切に対応する必要があるとも書かれています。

一次受けは応急手段、詳細は通訳を確保——この二段構えで組めます。①まず翻訳アプリで用件と緊急度を聞き取る、②内容が待遇・体調・家族・お金に関わるなら日を改めて通訳を手配する、と決めておくと動きやすくなります。社内文書の言い換えはやさしい日本語とAIで下書きを作るもご覧ください。

記録は様式で残す

運用要領別冊は、記録について次の2つを求めています。

場面 残す記録・様式
相談・苦情の対応を行った 相談記録書(参考様式第5-4号)に記録をしておく必要がある
相談・苦情を受けて関係行政機関へ相談・通報した 1号特定技能外国人支援計画の実施困難に係る届出書(参考様式第3-7号)または1号特定技能外国人支援計画の実施における特異事案報告書(参考様式第4-3号)に記載する必要がある

出典:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領 別冊」

相談記録書がたまると、「入国3か月目に給与明細の質問が増える」といった自社の傾向も見えてきます。3か月ごとの定期面談がこちらから聞きに行く場だとすれば、相談窓口は向こうから言ってもらう場です。2つの記録を並べて読むと、面談で聞けていなかった領域が見えてくることがあります。記録の残し方は支援マニュアルに組み込むと続きます。

先に渡しておくと、本人が動きやすくなるもの

ここからは任意的支援(義務ではないが望まれる支援)です。別冊は、本人が直接必要な手続を行いやすくするため、相談窓口の情報を一覧にするなどして、あらかじめ手渡しておくことが望まれるとしています。相談・苦情専用の電話番号やメールアドレスの設置も望まれる支援です。

一覧に載せる公的な相談先は、生活オリエンテーションで伝える内容が使えます。別冊が挙げているのは、地方出入国在留管理局、労働基準監督署、ハローワーク、法務局、警察署、市区町村、弁護士会・法テラス、大使館・領事館などです。入国直後の段取りは入国から最初の1か月にやること、来日前の説明は事前ガイダンスで何を伝えるかで扱っています。

自社の連絡先と公的な相談先を1枚にまとめ、スマートフォンで見られる形にしておく——ここまでで窓口は動き始めます。なお、本人が行う各種申請について受入れ企業等が案内し、申請時の同行に代えて申請取次を利用する場合、その費用は受入れ企業等が負担する必要があるとされています。書類の内容に判断が要るときは、行政書士等と連携して進めるのが確実です。

まとめ:まず「曜日と時間帯」を1行決める

  • まず決めるのは誰が・いつ・どの言語での3つ。専用の部署を新設する話ではない
  • 時間帯は、勤務日3日以上・休日1日以上、夜間などにも対応できることが求められる
  • 受けたあとは、遅滞なく応じる→助言・指導→必要に応じて適切な機関を案内し同行する
  • 一次受けは応急手段でよく、詳細な聞き取りは通訳を確保して行う
  • 記録は相談記録書(参考様式第5-4号)。行政機関へ相談・通報したものは参考様式第3-7号または第4-3号へ

どこまでを自社で持ち、どこから登録支援機関に委託するかは、受け入れ人数・勤務シフト・社内に対応できる言語があるかで答えが変わります。御社の勤務形態を伺ったうえで、現実に回る形をご一緒に組み立てます。私たちは登録支援機関(登録番号 25登-011704)として、相談窓口の設計と実施の支援を行っています。受入支援の内容もご覧ください。ご相談はお問い合わせからどうぞ。

最初の一手は、事前ガイダンスで伝える「○曜日から○曜日の○時から○時まで」の1行を、シフト表を見ながら埋めてみることです。埋まらない曜日が出たら、そこが体制づくりの検討点です。

なお、本記事の内容は公表されている情報にもとづく目安です。最新の要件は出入国在留管理庁の公表内容をご確認ください。

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