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外国人社員に伝わらない社内通知は「やさしい日本語」×AIで直せる

外国人社員に伝わらない社内通知は「やさしい日本語」×AIで直せる

「先月、休みの申し出の仕方を紙に貼りました。それなのに今月も、同じことを口頭で聞かれます」。受け入れ企業のご担当者から、よく伺う話です。掲示は出した。翻訳アプリで訳したものも添えた。それでも伝わっていない。原因を本人のやる気や日本語力に求める前に、一度見ていただきたいところがあります。紙に書いてある日本語そのものです。社内の通知文は、日本語を母語とする人にも回りくどいことが多く、書き方を変える余地が残っています。そして今は、その下書きを生成AIに手伝ってもらえます。この記事では、国が示す考え方と、AIに下書きさせて人が直す進め方を、1枚から始める形で整理します。

「やさしい日本語」は、国が考え方を示しています

出入国在留管理庁と文化庁は、「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」(2020年8月)を公表しています。国や地方公共団体がお知らせを作るときの手引きですが、同ガイドラインには「外国人の児童生徒が通う学校や、外国人の労働者が働く企業などでも使われることを期待しています」と書かれており、企業の通知文も想定の範囲に入っています。

特徴が2つあります。1つは、話し言葉ではなく書き言葉に焦点を当てていること。もう1つは、あえて厳密な基準を示していないこと。対象の言語背景や日本語能力に応じて柔軟に調節する必要があるため、と説明されています。つまり、決まった型に100点で合わせる話ではありません。手元の1枚を、いまより読みやすくすればよい。ここが、始めやすさの理由です。

同ガイドラインが引用している「東京都在住外国人向け情報伝達に関するヒアリング調査」(東京都国際交流委員会2018年・東京都在住または在勤の外国人100名)では、希望する情報発信言語として「やさしい日本語」を選んだ人が最も多く76%、次いで「英語」が68%でした。小規模な調査ですが、翻訳を添えれば足りるとは限らないことは読み取れます。

なお同ガイドラインは、やさしい日本語の取組と同様に、多言語での情報提供や、日本語学習の機会の確保が重要であることにも触れています。やさしい日本語は日本語学習の代わりではなく、入口をそろえるための道具です。本人側の学習が続く形については、日本語学習が止まる理由に書いています。

直す観点は、それほど多くありません

同ガイドラインは、書き換えのポイントを例文つきで示しています。いくつか挙げます。

観点 例文 書き換え例
略語は使わない 健診は年1回となります。 健康診断は1年に1回です。
曖昧な表現はできる限り使わない ごみ収集車は、月曜日の9時ごろに来ます。 ごみを集める車は、月曜日の午前8時30分から午前9時30分までに来ます。
二重否定を使わない 在留カード以外は必要ありません。 在留カードを持ってきてください。
文末は「です」「ます」で統一する お越しいただく必要はありません。 来なくてもいいです。

出典:出入国在留管理庁・文化庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」(2020年8月)。例文・書き換え例は原文のまま引用しています。

このほかにも、一文に言いたいことは1つだけにする、3つ以上を並べるときは箇条書きにする、漢字にふりがなをつける、元号ではなく西暦を使う、といった観点があります。言い換えが難しい言葉は消さずに残し、「余震<=後から来る地震>」のように後ろで説明する方法も示されています。

観点として並べると多く見えますが、社内の掲示を実際に直すと、効くところは一文を短くする・時間と場所を具体的に書く・敬語を削るの3つに集まることが多いです。

AIに下書きさせるときは、条件まで書いて頼む

書き換えは、生成AIが得意な部類の仕事です。ただ「やさしい日本語にして」とだけ頼むと、必要な言葉まで消えたり、説明が長くなったりします。頼み方に条件を足します。そのまま貼れる形にすると、こうなります。

次の社内掲示を、日本語を学習中の人が読める文章に書き直してください。 ・一文は短くし、1つの文に1つのことだけ書く ・尊敬語と謙譲語は使わず、文末は「です」「ます」でそろえる ・二重否定を使わない ・日付と時刻は「2026年8月20日 午前9時から午後5時まで」の形で具体的に書く ・「特定技能」「協議会」など制度の言葉は消さずに残し、後ろに短い説明を足す ・書き換えた箇所を、最後に一覧で出す

最後の1行が効きます。どこを触ったかが並んで出てくれば、人が確かめる場所がはっきりします。道具は、社内で契約している生成AIで構いません。製品の違いよりも、指示に条件を書き込んでいるかが、出てくる文章を左右します。

1つだけ、先に線を引いておくことがあります。在留カード番号・パスポート番号・氏名・住所や、個別の労務トラブルのやり取りは、AIに貼り付けないことです。書き換えたいのは全員に配る掲示であって、個人の情報ではありません。宛名は「〇〇さん」に置き換えてから貼れば足ります。どの情報を外に出してよいかは、使い始める前に一度決めておくと判断が速くなります。

人が必ず確定するところを決めておく

下書きが出てきたら、そのまま貼らずに人が通します。私たちが書類業務で使う線引きと同じで、下書きは自動・確定は人です。

項目 担当 理由
文の長さ・語彙・語尾 AIの下書きでよい 読めば分かる範囲に収まる
金額・日付・期限 人が確定 書き換えの過程で数字が丸められることがある
安全と手順の指示 人が確定 否定が消えると、意味が反対になる
社内固有の名称 人が確定 部署名・機械名・様式名は、言い換えると通じなくなる

とくに注意して読むのは、安全に関わる掲示です。「やさしく」する過程で、禁止が助言の強さまで弱まることがあります。重要な通知は、書き換えた文だけを配らず元の文も併記すると、後から突き合わせができます。

書き換えた文が本当に読めるかどうかは、読む本人に聞くのが確実です。同ガイドラインも3つ目のステップとして、日本語教師や外国人に確認してもらうことを挙げています。定期面談で1枚見せて「これ、分かりますか」と聞くだけで、直す場所が具体的に分かります。

最初の1枚は、毎回口で説明しているものから

全部を書き換える必要はありません。選び方は1つ、同じ説明を毎回口頭で繰り返しているものです。ゴミの出し方と収集日、シフトの見方と休みの申し出方、欠勤・遅刻の連絡先、緊急時の連絡先。このあたりが候補です。入社直後に渡す説明物は候補が集まりやすいので、入国後最初の1か月で渡している資料から選ぶのも進めやすい入り方です。

1枚できたら、それが次の1枚の型になります。2枚目からは「前に作ったこの掲示と同じ書き方で」と頼めるので、指示は短くなります。全社の文書を一斉に直す計画は要りません。どこから手をつけるか迷うなら、業務の棚卸しから入る手もあります。

どこまで書き換えるか、どの通知を原文と併記するかは、受け入れている人数、出身国、在籍年数、分野で答えが変わります。御社の場合にどう線を引くのがよいかは、実際の掲示物を拝見したうえでお伝えします。私たちはAI顧問・DX支援と登録支援機関としての支援の両方でご一緒しています。成果をお約束はできませんが、説明の手戻りが減ったというお声をいただいた例があります。

まとめ:今週配る1枚から

  • 「やさしい日本語」は、出入国在留管理庁と文化庁がガイドラインで考え方を示している。企業での活用も想定されている
  • 直す観点は多くない。一文を短く・時間と場所を具体的に・敬語を削るの3つがよく効く
  • AIには条件まで書いて頼み、書き換えた箇所を一覧で出させる。個人情報は貼らない
  • 金額・日付・安全の指示・社内固有の名称は人が確定する。重要な通知は元の文も併記する

次の一手は、今週配る予定の掲示を1枚だけ選び、条件をつけてAIに下書きさせ、人が金額と日付を確かめてから貼ってみることです。うまく読めたかは、次の面談で本人に聞けば分かります。

なお本記事の内容は2026年8月時点の公表資料にもとづく目安です。最新の内容は各府省庁の公表内容をご確認ください。

出典

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