内製化とコスト

支援責任者と支援担当者、社内で決める順番

支援責任者と支援担当者、社内で決める順番

「支援は自社でやってみたいのですが、担当は誰にすればいいのでしょう」——内製化のご相談では、費用や契約の話より先にこの質問をいただきます。支援を外注するか自社で行うかを決める前に、社内で誰が窓口になるかは必ず決めることになります。この記事では、支援責任者と支援担当者を社内で決めるときの順番を、制度の条件に沿って整理します。なお、記載は2026年8月時点で公表されている内容にもとづく目安です。制度の要件は改正されることがありますので、最新の要件は出入国在留管理庁の公表内容をご確認ください。

支援責任者と支援担当者は、何をする人か

特定技能1号の支援を自社で行う場合、役員または職員の中から支援責任者と支援担当者を選任することが求められています(特定技能基準省令 第2条第1項第1号)。2026年8月時点の運用要領では、2つの役の中身は次のように分かれています。

支援責任者 支援担当者
立場 役員または職員で、支援担当者を監督する立場にある者 役員または職員で、支援計画に沿った支援を行う者
常勤かどうか 常勤であることを問わない 常勤であることが望まれる
選任の単位 機関に対して選任する 事業所ごとに1名以上
主な役割 支援計画の作成、支援担当者の管理、進捗の確認、支援状況の届出、帳簿の作成・保管、関係機関との連絡調整 支援計画に沿った支援の実施。1人で複数の外国人を担当することもできる

支援責任者が支援担当者を兼任することもできます。ただしその場合も、双方の基準に適合していることが必要です。選任できる人の経路——過去2年間の受入れ実績、生活相談業務の経験、それらと同程度と認められる者のいずれか——は内製化に向く会社、向かない会社の見分け方に整理しました。

もう1つ、体制として求められているのが面談です。支援責任者または支援担当者が、外国人本人と、その人を監督する立場にある者の双方と定期的な面談を実施できる体制であることが基準に含まれており、オンライン会議システム等を活用する場合も含むとされています。拠点が離れている会社でも組み立てられる、ということです。面談で何を聞くかは定期面談で何を聞くかに書きました。

中立性の条件——直属の上司はそのまま充てられない

ここが、候補者を絞る一番大きな条件です。支援責任者と支援担当者は、外国人を監督する立場にない者など、支援計画を中立に実施できる立場の者であることが求められています(同省令 第2条第2項第4号)。運用要領は、この意味をかなり具体的に書いています。

運用要領が示す考え方
該当する 支援を受ける外国人と異なる部署の職員であるなど、その外国人に対する指揮命令権を有しない者
該当しない 代表取締役、その外国人が所属する部署を監督する長(製造課に所属するなら製造部長など)——組織図を作成したときに縦のラインにある者
そのほかの考慮要素 事業形態、外国人を監督する立場にある者と支援責任者・支援担当者との関係性

形式的に部署が違えばよい、という話ではありません。異なる部署であっても、実質的に指揮命令をし得る立場にある人は含まれないとされています。現場をよく知る直属の上司は、支援の相談相手として頼りになりますが、この2つの役にはそのまま充てられないわけです。

では誰から選ぶか。実務では、その外国人に指揮命令権を持たない管理部門——総務・人事・経理などの職員が候補になりやすいところです。人数が少なく、候補者がどうしても縦のラインに乗ってしまう会社もあります。その場合も道は閉じていません。支援の全部の実施を登録支援機関に委託すれば、受入れ機関が満たすべき支援体制の基準は満たしたものとみなされます。これは入管法第2条の5第5項に定められた取扱いで、運用要領にも記載があります(本記事末尾の出典をご確認ください)。委託を続けながら候補者を決めておく、という進め方ができます。

令和9年4月1日からの改正を、いま織り込む

出入国在留管理庁は、1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の改正を公表しています。令和9年(2027年)4月1日から施行される予定です。主な改正点は5つで、うち自社支援を行う受入れ機関に関わるのは①②③⑤です(④は登録支援機関についての規定です)。

改正点 自社支援への関わり
① 支援責任者・支援担当者を、支援を行う事業所ごとに常勤の役員または職員から1人ずつ以上選任(兼務は可) 及ぶ。現行の「常勤を問わない/常勤が望まれる」から条件が変わる
② 支援業務に従事することができる者を支援責任者・支援担当者に限定 及ぶ。誰が支援業務を行うかを整理しておく
③ 支援責任者に、支援能力向上のための養成講習(入管法や労働関係法令等)の受講を義務付け 及ぶ。登録支援機関だけの話ではない
⑤ 支援を行うことができる1号特定技能外国人の数を、支援担当者1人当たり50人未満とする 及ぶ。支援担当者が1人なら50人未満、3人なら150人未満が上限となる

③には経過措置が示されており、令和9年4月1日以降であっても、当分の間は講習を修了していなくても差し支えないとされています。慌てて手配する話ではありません。講習の実施機関や受講方法は本記事の執筆時点で私たちが確認できていないため、ここでは触れません。公表され次第、ご案内できるようにしておきます。

今日の意味は、①と⑤にあります。いま2名を決めるとき、「常勤の役員または職員から」「事業所ごとに」を意識して選んでおくと、施行日をそのまま迎えられる可能性が高くなります。受け入れ人数が増える見込みがあるなら、⑤の人数も一緒に見ておくと落ち着いて備えられます。

決める順番は、この4つ

順 やること 終わったといえる目安
① 候補を実名で2名書き出す 総務・人事など、支援に時間を割ける人の名前が2つ並んでいる
② 中立性で絞る その2名が、対象の外国人の組織図の縦のラインに乗っていないと確認できている
③ 兼任の範囲と工数を決める 兼任するのかしないのか、面談・記録・届出の時間が月のスケジュールに置けている
④ 記録の置き場所と引き継ぎ先を決める 支援記録の保管場所と、担当者が代わったときに引き継ぐ相手が決まっている

順番に意味があります。①で名前を出す前に制度の条文を読み込むと、条件の話だけで止まってしまいます。逆に、名前が2つ出ていれば、②から先は確認作業として進みます。④まで来ると、その内容がそのまま支援マニュアルの初版になります(支援マニュアルに何を書くか)。

支援を外注している会社も、この4つは無駄になりません。委託していても、本人からの相談を受け取り、委託先とやりとりし、在留期限を把握する社内の受け皿は要ります。そこに名前が付いている会社は、支援の状況が社内に見えます。将来外注から自社へ切り替えるときにも、この4つが起点になります。

なお、支援責任者を新たに選任したときや、役職の変更・退職があったときは、届出が必要になる場合があります。様式と期限は出入国在留管理庁の公表資料でご確認ください。私たちが内製化のご支援で行うのは、社内で作成できるようにするための手順と様式の整理、記載内容の作成支援までで、判断が要る場面は行政書士等と連携してご案内しています。

誰を充てられるかは、会社の規模、分野、既存の兼務の状況で答えが変わります。特に「候補が全員、組織図の縦のラインに乗ってしまう」場合の組み立て方は、社内の事情を伺わないとご提案できません。ここは個別にご相談ください。私たちの内製化コンサルティングも、いま外注している支援業務の棚卸しから始まります。社内のどなたに担っていただけるかは、その過程で見えてくることが多いです。委託を続けながら準備する形も含めて、登録支援機関としての支援とあわせてご相談いただけます。

まとめ:まず2名を紙に書く

  • 支援責任者は支援担当者を監督し統括する役、支援担当者は支援計画に沿って支援する役。兼任はできる(双方の基準に適合することが必要)
  • 現行は支援責任者が常勤を問わず、支援担当者は常勤が望まれる。令和9年4月1日からは、事業所ごとに常勤の役員または職員から1人ずつ以上に変わる予定
  • 選べないのは組織図の縦のラインにいる人。代表取締役や所属部署を監督する長は該当しない
  • 決める順番は、名前を2つ書く→中立性で絞る→兼任と工数→記録と引き継ぎ

次の一手は、候補者を実名で2名、紙に書き出してみることです。書けたら、その2名が縦のラインに乗っていないかを組織図で確かめる。ここまでは、今日の社内で終わります。その先の工数の置き方や、施行に向けた整え方は、一緒に考えさせてください。

出典

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