受入れの実務

入国前の事前ガイダンス、何を伝えるか

入国前の事前ガイダンス、何を伝えるか

事前ガイダンスは、運用要領が義務的支援の最初に挙げている項目です。名前は知っていても、日程が近づくと「いつやるのか」「何をどこまで話すのか」で手が止まる。受け入れ準備でよく起きる詰まり方です。

助かるのは、話す内容が公表資料に列挙されていることです。項目は10個。上から順に並べれば、話す順番で迷わずに済みます。この記事は2026年8月時点の出入国在留管理庁「運用要領別冊 1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(令和7年4月1日一部改正)にもとづき、いつ・何を・どの言語で話し、何を残すかを整理します。体制づくりは企業が最初にやること、分野と区分の確かめ方は自社の仕事は特定技能の対象か、調べる順番へ。

守る期限は「申請前」、望ましいのは「契約の締結時以前」

時期の基準は、特定技能基準省令第3条第1項第1号イにあります。

在留資格認定証明書の交付の申請前(当該外国人が他の在留資格をもって本邦に在留している場合にあっては、在留資格の変更の申請前)

つまり守るべき期限は申請前です。海外から新しく呼ぶなら交付申請の前、すでに日本にいる方なら変更申請の前です。

ただし運用要領は、もう一段早い時期を勧めています。

事前ガイダンスで提供する情報には、労働条件など特定技能雇用契約の締結前にあらかじめ外国人本人が把握することが望ましい情報が含まれていることから、事前ガイダンスの実施は特定技能雇用契約の締結時以前に行うことが望まれます。

労働条件を含む説明である以上、署名をもらってから話すのでは順番が逆です。義務は申請前、望ましいのは契約の締結時以前。この2つを分けて考えれば迷いません。

運用要領には「1号特定技能外国人が転職等に伴い特定技能1号(異なる特定技能所属機関等)へ変更した場合も事前ガイダンスを実施する必要があります」とあります。海外から呼ぶときだけの話ではありません。

実施するのは特定技能所属機関、または支援計画の全部の委託を受けた登録支援機関です。

事前ガイダンスの時期を示した時系列の図。義務は在留資格の申請前、望ましいのは契約の締結時以前

説明するのはこの10項目

情報提供しなければならない事項は、運用要領に10項目並んでいます。台本はこの並びのまま見出しにします。

# 情報提供しなければならない事項 押さえどころ
1 従事させる業務の内容、報酬の額その他の労働条件 中身は雇用条件書の記載事項まで(下記)
2 日本で行うことができる活動の内容 特定技能1号の活動であること、技能水準が認められた業務区分に従事すること
3 入国に当たっての手続 新規入国は、交付された在留資格認定証明書の送付を受け、管轄の日本大使館・領事館で査証申請を行い、交付日から3か月以内に入国。既に在留している場合は、在留カードを受領するまで新たな就労先での就労活動は認められないこと
4 保証金の徴収・違約金を定める契約がないこと 本人だけでなく配偶者・直系や同居の親族等まで対象。現にしていないこと、将来にわたりしないことを確認する
5 外国の機関に費用を支払っている場合の額と内訳 十分理解して合意していること。支払費用の有無、機関の名称、支払年月日、金額と内訳を確認する
6 支援に要する費用を本人に負担させないこと 義務的支援に要する費用は特定技能所属機関等が負担する
7 入国時の出迎えと送迎 港・飛行場での出迎えと、事業所(又は住居)までの送迎
8 適切な住居の確保に係る支援の内容 社宅等を貸与予定なら、広さのほか家賃等の本人が負担すべき金額を含む
9 相談・苦情の申出を受ける体制 例:○曜日から○曜日の○時から○時まで、面談・電話・電子メールの方法により受けられること
10 支援担当者の氏名、連絡先 メールアドレス等

1つ目の「労働条件」には幅があります。運用要領は、業務の内容や報酬の額のほか安全又は衛生に関する事項などの雇用条件書に記載された事項であり、労働基準法第15条の規定に基づき説明することを求めています。危険又は有害な業務に従事すると見込まれる場合は、その内容と安全衛生も説明の対象です。

4番目と5番目は、伝えるというより本人に確認する形の項目です。書面では分からないので、本人に尋ねる場が要ります。

これとは別に任意的支援として、入国時の日本の気候と服装、本国から持参すべき物・持参してはならない物、入国後に必要な当面の金額と用途、支給される物(作業着等)も考えられる、と示されています。義務ではありませんが、10項目のあとに添えると入国直後の質問が減ります。

対面かビデオ通話で、本人であることを確認して行う

方法も決まっています。

対面又はテレビ電話装置若しくはその他の方法(インターネットによるビデオ通話など)により、本人であることの確認を行った上で、実施することが求められます。文書の郵送や電子メールの送信のみによることは認められません。

資料を送って読んでおいてもらう、では実施したことになりません。顔が見えて、本人だと確認できる場が要ります。言語も「十分に理解することができる言語により実施することが求められます」とされています。

時間の目安も書かれています。

個別の事情によりますが、事前ガイダンスで情報提供する事項を十分に理解するためには、3時間程度行うことが必要と考えられます。

3時間は法定の下限ではなく、理解のために必要と考えられる目安です。同じ会社で技能実習生から引き続き雇用する場合も、労働条件など必要な情報は十分に理解させる必要があるとされています。この場合は支援計画上の実施予定時間より短く終わることが想定されるものの、1時間に満たないような場合は、事前ガイダンスを適切に行ったとはいえません、と明記されています。

海外とつなぐ場合は、時差と通信環境が効きます。3時間を1回で取るか、90分を2回に分けるかを先に決めると、日程調整が1往復で済みます。私たちも現地とやりとりするときは、相手側の時間割から決めます。

運用要領は、実施を現地の送出機関に委託することも「排除はされません」としたうえで、例えば送出機関が保証金を徴収しているような場合には適切に実施することが期待できないため、特定技能所属機関が支援の体制の基準を満たしていないと判断される可能性があると留意を促しています。誰が実施するにせよ、表の4番目と5番目は自社で確認できる形にします。

記録は「確認書」に署名を得て残す

運用要領は、確認対象の書類として事前ガイダンスの確認書(参考様式第5-9号)を挙げています。

事前ガイダンスを実施した場合は、事前ガイダンスの確認書(参考様式第5-9号)を1号特定技能外国人に示して確認の上、署名を得る必要があります。

大事なのは「示して確認の上」です。内容を確認してから署名をいただきます。署名欄だけ先に埋める書類ではありません。

誰が保管するかを最初に決めておくと後が楽です。支援計画・雇用条件書・確認書を1か所にまとめれば、更新時に迷いません。手順として残す形は支援マニュアルに何を書くかへ。

話したことは、入国後に効いてくる

事前ガイダンスは一度きりの説明ではなく、入国後の支援の下書きです。住居の広さと家賃、相談・苦情の受付体制、支援担当者の氏名と連絡先。ここで伝えたことが、入国後の住居の準備・生活オリエンテーション・定期面談の話題になります。

家賃を先に伝えていれば最初の給与明細の説明が要らず、相談窓口の曜日と時間を伝えていれば連絡が早く届きます。続きは入国から最初の1か月にやることと定期面談で何を聞くかへ。

運用要領には、実施後、就労開始前であっても相談に適切に応じることとしていることが望まれる、とも書かれています。

まとめ:この順に並べれば、台本は1枚で足ります

  • 時期:義務は申請前、望ましいのは契約の締結時以前。転職での受け入れも対象
  • 内容:運用要領の10項目。労働条件は雇用条件書の記載事項と安全衛生まで
  • 方法:対面かビデオ通話等で本人確認の上。郵送・メールのみは不可
  • 言語:本人が十分に理解することができる言語で
  • 時間:3時間程度が目安。1時間未満は適切に行ったとはいえない
  • 記録:確認書(参考様式第5-9号)に署名を得る

最初の一手は、10項目を上から並べた台本を1枚作ること。次の方からは日付・担当者・住居の条件を差し替えるだけ。

説明の分量と言語は、人数・分野・送り出しの体制で変わります。何語で行うか、通訳を挟むか、何回に分けるか。会社ごとに答えが違います。私たちは登録支援機関(登録番号25登-011704)として、この組み立てからご一緒しています。書類の作成支援で判断が要る場面は行政書士等と連携します。迷っているところをお聞かせください(受入支援の内容)。ご相談はお問い合わせからどうぞ。

なお、本記事の内容は公表されている情報にもとづく目安です。最新の要件は出入国在留管理庁の公表内容をご確認ください。

出典

URLのあるものはいずれも2026年8月12日に確認。

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