受入れの実務

定期面談で何を聞くか——離職の兆しに先に気づく設計

定期面談で何を聞くか——離職の兆しに先に気づく設計

入国後の手続きが一段落すると、受け入れは「日常」に入ります。ここから受け入れ企業と本人をつなぐ定例の接点が、定期面談です。制度上の義務として実施している会社は多いのですが、「毎回同じ質問をして、毎回『大丈夫です』と返ってくる」という声もよく伺います。実は、面談は聞く項目の設計しだいで、本人の変化に周囲より早く気づける場になります。この記事では、制度上の決まりごとを押さえたうえで、何を聞けば面談が機能するのかを整理します。

定期面談は「3か月に1回以上」の義務的支援

まず制度の枠組みです。出入国在留管理庁の「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」は、1号特定技能外国人の労働状況や生活状況を確認するため、本人と、その監督をする立場にある者(直接の上司や代表者等)のそれぞれと、3か月に1回以上の頻度で面談を実施する必要があるとしています。

項目 運用要領の定め
頻度 3か月に1回以上
実施者 支援責任者または支援担当者(全部委託の場合を除き、第三者への委託は不可)
相手 本人と、監督する立場にある者(指揮命令権を有する者)のそれぞれ
言語 本人が十分に理解できる言語で実施
方法 対面のほか、面談対象者の同意があればオンライン面談も可

出典:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」

ポイントは、面談の相手が本人だけではないことです。本人と上司の両方から聞く建て付けなので、双方の話を突き合わせると、片方だけでは見えない食い違い——本人は残業を負担に感じているが上司は気づいていない、など——が早い段階で表に出ます。制度が二者面談を求めているのは、この突き合わせに意味があるからだと私たちは理解しています。

「大丈夫です」で終わる面談と、機能する面談の違い

毎回「問題ありませんか?」と聞けば、答えはたいてい「大丈夫です」です。これは本人が隠しているのではなく、漠然とした質問には漠然とした答えしか返せないだけです。機能している面談は、聞き方が具体的です。

  • ✕「生活で困っていることはありませんか」
  • ✅「先月の給与明細で、分からない項目はありましたか」「休みの日は誰とどこへ行きましたか」
  • ✕「仕事は順調ですか」
  • ✅「最近増えた作業はありますか」「作業の指示で、聞き取れなかった言葉はありましたか」

答えが「はい/いいえ」で終わらない形にすること、本人の記憶が具体的に呼び出せる直近の出来事に紐づけることがコツです。運用要領も、面談を効果的に行う準備として、質問予定の項目についてあらかじめアンケート等を実施してよいとしています。事前に質問票を渡しておけば、本人は母語で調べながら答えを用意でき、面談の場は「書いてもらった答えを深掘りする時間」に変わります。毎回同じ質問を同じ順番で繰り返さず、順番や聞き方を変えて様子を確認する方法も、運用要領が挙げているやり方です。

聞く項目は4領域で設計する

質問を場当たりで考えないために、私たちは仕事・生活・人間関係・学習の4領域で項目を設計しています。

領域 聞く項目の例
仕事 業務内容の変化、残業の実感、給与明細で不明な点、体調
生活 住まいの困りごと、お金の使い方の変化、休日の過ごし方
人間関係 職場で話す相手、同郷の友人との付き合い、家族の状況
学習 日本語学習の進み具合、次に受ける試験、キャリアの希望

4領域にするのは、不調が出る場所が人によって違うからです。仕事は順調でも家族の事情で心が揺れていることもあれば、その逆もあります。毎回4領域を一巡すれば、前回との差分が見えるようになります。面談の価値は1回の回答そのものより、この差分にあります。

監督者との面談も、同じ4領域を上司の目線に置き換えて聞きます。担当業務の広がり方、日本語でのやり取りで詰まる場面、職場での輪の入り方、本人が口にした希望。本人の回答と上司の回答を並べて、ずれている領域を次回の重点にする——この回し方にすると、二者面談が単なる2回の作業ではなく、突き合わせの仕組みとして働きます。なお、派遣形態での受け入れでは、派遣先の監督的立場にある者との面談が必要とされています。

離職の兆しは「変化」に出る

転職や離職の相談は、ある日突然に見えて、振り返ると小さな変化が先に出ていることがほとんどです。たとえば次のようなものです。

  • 給与や残業代の質問が増える(待遇への関心が高まっている)
  • 休日の過ごし方が変わった、同郷の集まりの話が増えた(情報交換の輪が変わった)
  • 日本語学習やキャリアの話への反応が薄くなった(この職場での将来像が描けていない)
  • 家族からの送金や帰国の話題が増えた(家庭の事情が動いている)

大切なのは、これらを「離職のサインだ」と身構えることではなく、変化に気づいた時点で話を聞き、手を打てるものは打つことです。待遇の疑問は説明すれば解けることが多く、キャリアの不安は次の目標(試験や資格)を一緒に置けば前を向きます。面談を3か月ごとに定点で行う意味は、まさにこの「変化への気づき」を仕組みにできることにあります。なお、面談で労働関係法令への違反その他の問題を知ったときは、労働基準監督署など関係行政機関へ通報することまでが義務的支援に含まれています。

記録は様式で残し、次回の面談につなぐ

面談は記録までが1セットです。運用要領は、定期面談を行った場合、1号特定技能外国人用と監督者用の定期面談報告書(参考様式第5-5号・第5-6号)を作成する必要があるとしています。オンライン面談を行う場合は、同意の書面を帳簿として保存し、録画を一定期間保管する必要もあります。また、受け入れ後初めての面談や担当者交代後の初回は対面で行うこと、オンラインを活用する場合も1年に1回以上は対面で実施することが望まれるとされています。信頼関係ができる前のオンラインは、本音が出にくいという実務感覚とも一致する目安です。

様式を埋めるだけで終わらせず、前回の報告書を面談前に読み返して「前回と変わった点」をメモしてから臨むと、記録が次の面談の教材になります。入国直後の生活の立ち上げについては入国から最初の1か月にやることで、受け入れ準備の全体像は特定技能で人を受け入れるとき、企業が最初にやることで整理していますので、あわせてご覧ください。

まとめ:次の面談を「設計してから」迎える

  • 定期面談は3か月に1回以上。本人と監督者のそれぞれと行う義務的支援
  • 質問は具体的に。事前アンケートで本人に準備の時間を渡す
  • 仕事・生活・人間関係・学習の4領域を毎回一巡し、前回との差分を見る
  • 変化に気づいたら、その場で手を打てるものから打つ
  • 報告書(参考様式第5-5号・5-6号)を作成し、次回の面談前に読み返す

最初の一手は、次回の面談の質問票を4領域で作ってみることです。誰が実施者か、本人が十分に理解できる言語で行えるか、という体制の論点は、社内の人員と受け入れ人数で答えが変わります。そこはお話を伺ったうえで、御社の場合どうかをお伝えします。私たちは登録支援機関として、面談の設計と実施もご一緒しています。受入支援の内容もあわせてご覧ください。

なお、本記事の内容は公表されている情報にもとづく目安です。最新の要件は出入国在留管理庁の公表内容をご確認ください。

出典

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