内製化とコスト

支援を委託していても、自社に残る仕事

支援を委託していても、自社に残る仕事

「支援は登録支援機関に全部お任せしています」——受け入れが始まって1年ほど経った会社にお伺いすると、この一言から話が始まることがよくあります。私たち自身も登録支援機関(登録番号 25登-011704)として支援を受託しているので、この形はよく分かります。そのうえでお伝えしたいのは、制度は委託したあとも受入れ企業の側に置いたままにしている仕事を持っている、ということです。委託先の仕事ぶりの話ではなく、法律がもともと主体を分けて書いている、という建て付けの話です。この記事では、2026年8月時点で公表されている内容をもとに、全部委託でも自社に残るものを並べます。

「全部委託」で、制度上みなされること

入管法第2条の5第5項は、特定技能所属機関が契約により登録支援機関に適合1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託する場合には、同条第3項(第2号に係る部分に限る。)の規定に適合するものとみなすと定めています。出入国在留管理庁の運用要領は、これを「登録支援機関に全部の実施を委託した場合には、特定技能所属機関は、1号特定技能外国人支援計画の適正な実施に係る基準に適合するものとみなされる」と説明しています。

読みどころは、みなされる対象が**「支援計画の適正な実施に係る基準への適合」**と限定して書かれていることです。受入れ企業の義務がまとめて消える、という書き方はされていません。だから「委託したら何も残らない」でも「委託しても全部残る」でもなく、どこが移り、どこが残るのかを一度並べてみるのがいちばん早い、ということになります。

もう1点、運用要領は、全部の実施を委託した場合でも、当該登録支援機関の体制からして実効性ある支援を行うことができないと認められるときは、受入れが認められない場合があるとしています。これは委託先を疑ってくださいという話ではなく、制度が委託先の体制まで含めて見る建て付けになっている、という意味です。

委託していても、会社の名前で動くもの

運用要領と別冊(支援)から、全部委託でも受入れ企業に残ると読める仕事を並べます。

残るもの 制度上の位置づけ
雇用契約の履行 報酬額が日本人と同等額以上であることを含め、特定技能雇用契約の適正な履行が確保されるものとして基準に適合していることが求められます
支援計画の作成 全部の実施を委託する場合であっても、支援計画の作成は特定技能所属機関が行うこととされています
本人への交付と説明 支援計画の作成が会社に残ることに伴い、支援計画は日本語のほか本人が十分に理解できる言語でも作成し、写しを交付して内容を説明し、理解したことについて署名を得る必要があるとされています
定期届出 対象年4月1日から翌年3月31日までの受入れ・活動・支援実施状況を、翌年4月1日から5月31日までに届け出ることとされています(届出事項に支援の実施状況が含まれます)
帳簿・文書の備付け 特定技能外国人の管理簿、活動状況に関する帳簿(支援に要した費用の額及び内訳を含む)、雇用条件、賃金台帳、出勤状況などを備え置くこととされています。電磁的記録による備付けも認められています

支援計画の作成については、運用要領が「登録支援機関が必要に応じて支援計画の作成の補助を行うことは差し支えありません」「委託先の援助を受けることを妨げるものではありません」とも書いています。自社だけで書き上げてください、という意味ではありません。作成の名義と最終的な内容の確認が会社に残る、と読むのが実務に合います。

一方で、委託の範囲によって会社が出さなくてよくなる届出もあります。支援計画の実施困難に係る届出は、支援を全部委託している場合、特定技能所属機関による届出は不要とされています(この場合は登録支援機関が特異事案報告書を提出します)。届出は一律ではなく、委託の形で変わる——ここが見分けどころです。届出そのものの中身は随時届出の場面と期限と年1回の定期届出に整理してあります。

残る仕事を並べると、委託費の中身が読めるようになる

費用の側にも、制度が用意している手がかりがあります。1号特定技能外国人支援に要する費用のうち義務的支援に係るものは、直接にも間接にも本人に負担させることができないとされています。そして、全部の実施を委託する契約を結ぶにあたって、登録支援機関は受入れ企業に対し、支援に要する費用の額及び内訳を明示することが求められています。

つまり、内訳は契約時に受け取っている書面の中にあります(委託契約書のほか、登録支援機関との支援委託契約に関する説明書=参考様式第1-25号などに明示されている場合があります)。読み直せている会社は、この順で見ています。

順 見るもの 分かること
① 委託契約書・支援委託契約に関する説明書の費用の額と内訳 毎月の金額が、どの支援に対応しているか
② 支援計画書 委託している支援と、自社で動いている支援の境目
③ 上の表(残るもの) 委託費の外側にある自社の工数がどれくらいか

③まで来ると、「委託費が高い・安い」ではなく「いま自社は何を持っていて、何を持っていないか」という形で会社の状態が見えます。費用の形そのものの違いは支援費用、外注と内製でいくら違うのかに書きました。

委託を続けたまま、一部を戻す形もある

全部か自社かの二択ではありません。制度は、支援の一部だけを委託する形も認めています。ただし押さえておく点が3つあります。

  • 支援計画の全部の実施を複数の登録支援機関に委託することはできないとされています(基準を満たす会社が、自らの責任の下で複数の第三者に委託する形は認められています)
  • 委託を受けた支援業務をさらに委託することは認められません。通訳や送迎のタクシーなど、履行を補助する範囲での依頼は差し支えないとされています
  • 定期的な面談の実施と行政機関への通報は、一部委託では第三者に委託できないとされています。全部委託から一部委託に移すなら、最初に自社へ戻るのはここです

どこまでを自社で持つかは、受け入れ人数、分野、社内に置ける担当者の数で変わります。判断の軸は内製化に向く会社、向かない会社の見分け方、担当者の決め方は支援責任者と支援担当者、社内で決める順番、切り替えの順番は外注から自社へ、切り替えの段取りにあります。

まとめ:残るものを1枚に並べるところから

  • みなされるのは支援計画の適正な実施に係る基準への適合。義務がまとめて消えると書かれているわけではない
  • 全部委託でも、雇用契約の履行・支援計画の作成・本人への交付と説明・定期届出・帳簿の備付けは会社の側にある
  • 支援計画の作成は、委託先の補助や援助を受けて進めて差し支えないとされている
  • 委託費の内訳は契約時の書面に明示されている。残るものと並べると、自社の工数が見える
  • 一部委託という形もある。ただし定期面談の実施は一部委託では第三者に出せない

最初の一手は、上の表をそのまま1枚に写して、それぞれ社内の誰の名前が入るかを書いてみることです。名前が入る欄と空欄が分かれた時点で、委託の中身は読み直せる状態になります。

どこまでを自社で持つのが自然かは、体制と人数で答えが変わります。線引きのご相談はお問い合わせからどうぞ。私たちの内製化コンサルティングは、この棚卸しから始めますし、いまの委託を続けたまま準備する形も登録支援機関としての支援とあわせてご相談いただけます。届出書の作成を社外へ委任できる相手は行政書士または弁護士に限られているため、私たちが行うのは社内で作成できるようにするための手順と様式の整理、書き方の整理までで、判断が要る場面は行政書士等と連携してご案内しています。

なお、本記事の内容は公表されている情報にもとづく目安です。最新の要件は出入国在留管理庁の公表内容をご確認ください。

出典

2026年8月13日に確認。

お問い合わせ →

まずは、お話を聞かせてください。

現状を伺ったうえで、必要な選択肢だけをお伝えします。

お問い合わせ →