内製化とコスト

登録支援機関への委託をやめて自社支援へ — 切り替えの手順と届出の順番

登録支援機関への委託をやめて自社支援へ — 切り替えの手順と届出の順番

「支援を自社でやろうと思います。委託契約は、いつ切ればいいでしょうか」——内製化のご相談で、いちばん多くいただく質問です。私たち自身も登録支援機関として支援を受託していますので、この質問は正面から受け止めています。そのうえでお答えすると、最初に決めるのは解約日ではありません。決める順番があり、その順番どおりに進めると、切り替えの日に支援が途切れにくくなります。この記事は、その段取りです。

切り替えを決める前に確かめる3つ

支援の全部を登録支援機関に委託していると、受入れ機関が満たすべき支援体制の基準は満たしたものとみなされます。自社支援に切り替えるということは、この基準を今度は自社で満たすということです。出入国在留管理庁の随時届出Q&A(令和7年6月)にも、支援委託契約を終了した場合は、特定技能所属機関の役職員の中から支援責任者と支援担当者を選任し、1号特定技能外国人支援計画書のとおり支援を実施する必要がある、と示されています(同Q&A 問4-3)。

確かめるのは次の3つです。

確かめること 埋まっている状態
支援体制の基準 支援責任者と支援担当者を、実名で選任できる
担当者の時間 3か月に1回以上の面談、記録の作成、届出の作成を業務時間の中に置ける
言語の手当 本人が十分に理解できる言語で支援できる(通訳を委託で確保する形でもよい)

基準の中身——過去2年間の受入れ実績や生活相談業務の経験がどう効くのか——は内製化に向く会社、向かない会社の見分け方に書いたので、ここでは深追いしません。3つのうち埋まらない欄があるなら、切り替え日を決める前にそこを埋めます。埋め方は会社ごとに違いますが、いちばん多いのは「選任はできるが時間が置けない」という形で、これは担当者の業務配分の話なので社内で解けます。

順番を間違えない

段取りは5つで、順番に意味があります。

順 やること 終わったといえる目安
① 自社の支援体制を作る 支援責任者・支援担当者・言語の手当・記録の置き場が決まっている
② 委託先と契約終了の時期をすり合わせる 終了日と、引き継ぐ資料の受け渡し日が決まっている
③ 支援計画を自社支援の内容に整える 支援計画書の実施者欄が自社の名前で書けている
④ 届出を出す 事由が生じた日から14日以内に提出できている
⑤ 本人に説明する 相談先が変わることを、本人が理解できる言語で伝えている

つまずきは、①を飛ばして②から始めてしまう形がいちばん多いです。先に解約日を決めると、選任や言語の手当が間に合わないまま切り替えの日が来て、支援計画のとおりに支援を始められない期間ができます。これは委託先の問題でも会社の力不足でもなく、順番の問題です。逆に言えば、①さえ終わっていれば、切り替え日はそこから逆算して置けます。急ぐ必要はありません。

⑤も落とさないでください。変更した支援計画書については、支援対象者の署名までは求められていませんが、本人が十分に理解できる言語に翻訳して交付し、変更の内容を十分に説明することとされています(同Q&A 問3-2)。本人にとっては「困ったときの連絡先が変わる」という大きな変化ですから、ここを丁寧にやると、切り替え後の相談が続きます。

届出まわりで押さえること

自社支援への切り替えでは、届出は2本セットになります。片方だけでは足りません。

届出 参考様式 期限
支援委託契約の終了に係る届出 第3-3-2号 事由が生じた日から14日以内
1号特定技能外国人支援計画変更に係る届出 第3-2号 事由が生じた日から14日以内

支援計画変更の届出には、1号特定技能外国人支援計画書(参考様式第1-17号)の「Ⅲ 登録支援機関」欄の情報を削除し、「Ⅱ 特定技能所属機関」欄に必要事項を記載したものを添付します。支援計画書は全ページを出す必要はなく、変更箇所と末尾(機関名称、作成責任者の氏名)のページで足りるとされています(同Q&A 問3-1)。

提出は電子届出システム・窓口持参・郵送のいずれかで、宛先は本店の住所を管轄する地方出入国在留管理官署(空港支局を除く)です。郵送の場合は、14日以内に官署へ到達している必要があります(同Q&A 問1-3)。また、届出事由の発生日に未来の日付は使えません(同Q&A 問1-2)。「来月1日付で切り替えるので先に出しておく」という出し方はできません。

届出書の作成を社外へ委任できるのは、行政書士または弁護士の身分を有する方に限られます(同Q&A 問1-7)。私たちが内製化のご支援で行うのは、社内で作成できるようにするための手順と様式の整理、記載内容の作成支援までで、判断が要る場面は行政書士等と連携してご案内しています。

なお、ここに書いた様式番号・期限・届出の取扱いは2026年8月時点で公表されている内容にもとづく目安です。最新の要件は、出入国在留管理庁の公表内容をご確認ください。

引き継ぎで落ちやすいもの

契約の終了と届出が済んでも、切り替えが完了したことにはなりません。実務が続くために要るものを、終了日までに受け取っておきます。

受け取るもの なぜ要るか
面談記録 支援の状況に係る文書は、特定技能所属機関が特定技能雇用契約の終了日から1年以上、自社に備えて置くこととされています(運用要領 第5章第2節)。過去の経緯が切れると、本人の相談の続きが取れません
期限の一覧 在留期間の満了日、分野別協議会の証明書、健康診断など、人と分野で日付が違うもの
定期届出の材料 定期届出の対象期間は4月1日から翌年3月31日まで(翌年5月31日までに提出)。期の途中で切り替えると、委託していた期間の支援実施状況も取りまとめて提出します
本人との関係 資料では引き継げない部分。終了前の面談に自社の担当者が同席しておくと、切り替え後の初回が初対面になりません

期限ものは、受け取った時点で1か所に集めてしまうのが確実です。集め方は情報が散らばっている会社が、まず1か所に集めるべきものに、手順を自社の言葉で残す形は支援マニュアルに何を書くかに書きました。引き継ぎ資料は、そのままマニュアルの初版の材料になります。

全部を一度に引き取らなくてよい

「体制はできそうだが、いきなり全部は不安だ」という場合、一部だけ自社で持つ形があります。制度上も、支援の一部だけを登録支援機関に委託する形は認められていて、その場合の支援の実施者はあくまで特定技能所属機関になります(同Q&A 問3-8)。つまり支援体制の基準は自社で満たす必要がありますが、実務の負荷は段階的に増やせるわけです。

届出の扱いは押さえておいてください。全部委託から一部委託に変えた場合も、支援委託契約の終了に係る届出と、支援計画変更に係る届出が必要です(同Q&A 問3-8)。一方で、届出の対象となる支援委託契約は支援の全部の実施を委託する契約を指すため、一部委託の契約そのものは届出の対象にはならないとされています(同Q&A 問4-1)。また、定期面談の実施を一部委託することはできません(同Q&A 問3-8)。裏返せば、最初に自社へ戻すことになるのは定期面談です。ここは記録と知見がいちばん貯まる業務なので、一歩目としては自然だと思います。定期面談で何を聞くかもあわせてお読みください。

どこまでを一度に引き取るかは、受け入れ人数、分野、担当者の人数で答えが変わります。切り替えの時期も同じで、在留期間の更新や協議会の証明書更新が近い時期は避けたほうが動きやすいこともあります。ここはお話を伺わないと決められない部分ですので、個別にご相談ください。私たちの内製化コンサルティングは、この棚卸しと段階の設計から入ります。自社内に支援チームを立ち上げて年間の支援費用を削減できた事例もありますが、結果は受け入れ人数・分野・社内体制により異なり、同じ成果をお約束するものではありません。

まとめ:解約日ではなく、体制から決める

  • 切り替えの起点は支援責任者・支援担当者の選任。ここが決まると、切り替え日は逆算で置ける
  • 届出は支援委託契約の終了と支援計画の変更の2本セット。どちらも事由発生日から14日以内
  • 支援計画書は、登録支援機関の欄を削除し、自社の欄を記載したものを添付する
  • 面談記録・期限の一覧・定期届出の材料は、契約終了日までに受け取る
  • 全部を一度に引き取らなくてよい。一部委託という形があり、最初に自社へ戻るのは定期面談

次の一手は、支援責任者と支援担当者の候補を実名で1人ずつ書き出し、その人の来月のスケジュールに面談と記録の時間を置けるか見てみることです。置けるなら、切り替え日はそこから逆算できます。置けないなら、置けるようにする方法から一緒に考えます。

出典

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