制度を知る
特定技能の転職者を受け入れる、手続きと期限

「いま特定技能で働いている方が、うちに来てくれるそうなんです。海外から呼ぶより早いですよね」——分野を問わず、こうしたご相談が増えています。国内にいる方を迎える段取りは海外から呼び寄せる場合とは別の線で進みますが、「来月から来てください」と決める前に押さえておく順番があります。出入国在留管理庁の公表内容にそって、手続きの順番と期限の起点を整理します(2026年9月1日時点)。
転職でも、在留資格変更許可申請から始まります
特定技能で在留している方には、在留カードとあわせて指定書が交付されています。働ける受入れ機関(特定技能所属機関)と特定産業分野を、法務大臣が個別に指定した書面です。
出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(令和8年8月)は、留意事項として次のように記載しています。「特定技能外国人が、転職により指定書に記載された特定技能所属機関を変更する場合又は特定産業分野を変更する場合は、在留資格変更許可を受けなければなりません」。
つまり、同じ分野・同じ業務区分の転職であっても、会社が変わるなら在留資格変更許可申請が要ります。自社が契約締結を届け出れば足りる形ではありません。
同要領は、特定技能雇用契約が終了しても直ちに帰国することにはならず、新たな受入れ機関と契約を締結して在留資格変更許可を受ければ引き続き在留できる、とも整理しています。
働き始められるのは、在留カードを受け取った日から
すれ違いが起きやすいのがここです。同要領は続けて「在留資格変更許可申請中は、変更予定の就労先での就労活動は認められません」と記載しています。
この点は本人にも必ず伝える項目です。「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(令和7年4月1日一部改正)は、事前ガイダンスで情報提供しなければならない事項に、既に在留している方の場合は「在留資格変更許可を受ける(在留カードを受領する)までは、新たな就労先での就労活動は認められないこと」を挙げています。
では、どのくらい先を見ておくか。同庁「特定技能制度に関するQ&A」は、標準処理期間を「在留資格変更許可申請は1か月から2か月」としています。個別の期間や結果は審査を経て決まりますが、逆算の目盛りにはなります。就労開始日を先に約束せず、許可を受けた日を起点に配置を組む。それだけで現場のシフトにも本人の生活にも無理がなくなります。
届出は、前の会社・本人・自社で分かれます
転職の場面では、動く書類が3方向に分かれます。受入れ機関の届出は、出入国管理及び難民認定法施行規則第19条の17第2項が「事由が生じた日から14日以内に(中略)提出しなければならない」と定めています。
| 誰が | 何を出すか | 期限の起点 |
|---|---|---|
| 前の受入れ機関 | 受入れ困難に係る届出書(参考様式第3-4号)。自己都合退職を除き、あらかじめ提出 | 事由が生じた日から14日以内 |
| 前の受入れ機関 | 特定技能雇用契約の終了に係る届出書(参考様式第3-1-2号) | 契約の終了日から14日以内 |
| 本人 | 所属(契約)機関に関する届出(契約の終了・新たな契約の締結) | 事由が生じた日から14日以内 |
| 自社 | 届出ではなく在留資格変更許可申請。許可を受けてはじめて受入れ機関になる | 就労開始は許可の後 |
本人の届出は入管法第19条の16にもとづくもので、対象の在留資格に特定技能が含まれています。受け入れる側からこの届出の存在を伝えておくと、取りこぼしが減ります(数え方は随時届出の記事へ)。
申請の前に、自社側で終えておくもの
申請の前に置く準備が4つあります。
第1に、分野別協議会の構成員になること。 同庁のQ&Aは「特定技能所属機関は在留諸申請の前に必ず構成員となる必要があります」としています。時間がかかる分野もあるので、先に着手します(協議会と証明書の期限)。
第2に、1号特定技能外国人支援計画を自社の名前で作ること(参考様式第1-17号)。前の会社の計画を引き継ぐ形ではありません。
第3に、事前ガイダンスの実施。 支援に係る運用要領は、転職等に伴い異なる特定技能所属機関へ変更した場合も事前ガイダンスを実施する必要がある、と明記しています。生活オリエンテーションも同じです。
| 支援 | 実施の時期 | 時間の目安(同要領) |
|---|---|---|
| 事前ガイダンス | 在留資格の変更の申請前 | 3時間程度。1時間に満たないときは適切に行ったといえない |
| 生活オリエンテーション | 在留資格の変更を受けた後、遅滞なく | 少なくとも8時間以上。生活環境に変化がない場合でも4時間未満は適切といえない |
事前ガイダンスは対面またはテレビ電話等で本人確認をしたうえで行うこととされ、郵送やメールのみは認められていません。中身は事前ガイダンスで何を伝えるかへ。
第4に、住居です。 同要領は、既に住居を確保していて引き続き同じ住居に居住する場合など、支援が客観的状況に照らして明らかに不要なら実施しなくても差し支えないとしつつ、退去せざるを得なくなった場合は新たな支援が必要になるとしています。転職は通勤圏が変わりやすいので、面談の早い段階で住まいの見通しを聞いておくと後が楽です。
分野や業務区分をまたぐときは、試験の確認から
同庁のQ&Aは、転職が認められる範囲を「同一の業務区分内又は試験等によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間」と説明しています。分野と業務区分は分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定)に定められています。当てはめ方は対象分野の調べ方をご覧ください。
受入れ上限の運用も見ておきます。外食業分野は在留資格認定証明書の交付が一時停止中ですが、同庁「受入れ上限の運用について」(令和8年3月27日)は「外食業分野で特定技能1号として在留する方からの申請(転職等に伴う申請)は通常どおり審査する」としています。審査状況のページ(2026年8月10日掲載)でも、分野内の転職は「全ての申請」が審査対象と示されています。開いているルートは公表されているということです(外食業の上限の記事)。
判断が分かれるところは、個別にご相談ください
私たちは登録支援機関(登録番号 25登-011704)として、受け入れ後の支援と、社内で手続きを回す体制づくりをお手伝いしています。書類は作成の支援を行い、判断を要する部分は行政書士等と連携して進めます(代表の神谷は申請等取次者の承認を受けています)。内容は受入れ支援のご案内へ。
分野・業務区分の当てはめ、協議会の加入時期、支援体制の組み方は、御社の事業内容と体制で変わります。「こういう方から話が来ている」という段階でのご相談が、いちばん整理しやすい形です。
まとめ:次の一手
- 転職でも在留資格変更許可申請が要る。同じ分野・同じ業務区分でも会社が変われば同じ
- 申請中は、変更予定の就労先での就労活動は認められない。就労開始は在留カードの受領後で、標準処理期間は1か月から2か月と公表されている
- 前の受入れ機関と本人の届出は、いずれも事由が生じた日から14日以内
- 自社側は、協議会・支援計画・事前ガイダンス・住居を申請の前に整える
最初の一手は、在留カードと指定書を見せてもらい、分野・業務区分・在留期限の3点を控えることです。ここが決まると、試験の要否も逆算の起点も同時に見えてきます。ご相談はお問い合わせからどうぞ。
なお、本記事の内容は公表されている情報にもとづく目安です。最新の要件は出入国在留管理庁の公表内容をご確認ください。
出典
いずれも2026年9月1日に確認。
- 出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(令和8年8月)/「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(令和7年4月1日一部改正) https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri07_00201.html
- 同「特定技能制度に関するQ&A」 https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/faq.html
- 同「所属(契約)機関に関する届出」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri10_00015.html
- 同「外食業分野における受入れ上限の運用について」(令和8年3月27日) https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/03_00001.html
- 同「特定技能1号(外食業分野)の審査状況」(2026年8月10日掲載) https://www.moj.go.jp/isa/10_00259.html
- 同「基本方針・分野別運用方針」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri01_00132.html
