内製化とコスト

登録支援機関の委託費、金額差はどこから生まれるか

登録支援機関の委託費、金額差はどこから生まれるか

「見積を何社かいただいたのですが、金額がばらばらで、どれが妥当なのか分かりません」——特定技能1号の受け入れを始めるときに、よくいただくご相談です。私たち自身も登録支援機関(登録番号 25登-011704)として支援を受託しているので、見積を出す側の事情も、比べる側の困り方も見てきました。先にお伝えすると、この金額差は不透明さの表れではありません。含まれている仕事の量と形の差として、手元の紙の上で読めます。この記事では、2026年9月5日時点で公表されている出入国在留管理庁の運用要領別冊(令和7年4月1日一部改正)をもとに、差がどこから生まれるのかを整理します。

公式な相場表は無い。だから「範囲」で読む

出入国在留管理庁によれば、登録支援機関は2026年8月31日現在で11,579件が登録されています。一方で、委託費の全国的な相場を示した公的な統計は、2026年9月5日時点では確認できませんでした。民間の平均額や価格帯の集計は流通していますが、対象も時点もまちまちで、御社の見積が高いか安いかを決める物差しにはなりにくいものです。

代わりに、運用要領別冊は費用についてこう書いています。

運用要領別冊の記載 読みどころ
委託費用は、支援の対象となる1号特定技能外国人の数、特定技能所属機関の事業所数や場所等に応じて異なり得る 金額に幅が出ること自体を、制度が前提にしている
全部の実施を委託する契約を締結するに当たり、登録支援機関は支援に要する費用の額及び内訳を明示することが求められる 内訳は、すでに手元の書面の中にある
複数の登録支援機関から見積りをとるなど支援内容等を十分に確認した上で、契約後にトラブルが生じないよう留意する 比べて確かめることが、そもそも想定されている
義務的支援に要する費用は、直接にも間接にも本人に負担させることができない 誰が支援するかにかかわらず、費用は会社が持つ

制度の側は「相場と照らして」ではなく、「内訳と支援内容を確認して」という書き方をしています。軸をここに置き換えると、比較はぐっとやりやすくなります。高い・安いではなく、何が入っていて、何が入っていないかを見る、ということです。

見積を、義務的支援10項目に並べ直す

やることは1つです。紙を1枚用意して、縦に義務的支援の10項目を書き、手元の見積のどの行がどれに当たるかを右に書き込む。10項目は、運用要領別冊の支援計画書(参考様式第1-17号)にこう並んでいます。

# 義務的支援の項目 発生の仕方 見積のどの行か
① 事前ガイダンスの実施 在留資格認定証明書の交付申請前に実施(すでに国内に在留している方は在留資格の変更の申請前)。3時間程度が必要と考えられるとされる
② 出入国する際の送迎 入国時と出国時
③ 住宅確保・生活に必要な契約支援 入国時と、転居があったとき
④ 生活オリエンテーションの実施 入国後。少なくとも8時間以上とされる
⑤ 公的手続等への同行 必要に応じて随時
⑥ 日本語学習の機会の提供 在籍している間、継続的に
⑦ 相談・苦情への対応 随時。離職が決まった後も雇用契約がある間は継続
⑧ 日本人との交流促進 随時
⑨ 転職支援(会社都合で雇用契約を解除する場合) 会社都合の契約解除が生じたとき
⑩ 定期的な面談の実施・行政機関への通報 3か月に1回以上

埋めてみると、たいてい2つのことが起こります。1つは、見積の1行が複数の項目にまたがること。「月額支援費」の1行が⑤から⑧と⑩をまとめて引き受けている、という形です。もう1つは、どの項目にも当たらない行が残ること。初期費用や通訳費などです。この2つが見えた時点で、複数の見積は同じ土俵に載ります。10項目それぞれの中身は支援計画を自社で書く——10項目の埋め方に整理してあります。

差が生まれるのは、だいたいこの4か所

並べ直した表を2社分つき合わせると、差はほぼ次の4か所に集まります。

差が出る場所 見積で確かめること
① 支援の範囲 全部委託か一部委託か。任意的支援まで含んでいるか
② 面談の回数と方法 訪問して行うか、オンラインか。年に何回を前提にした金額か
③ 言語対応 何語まで込みか。通訳の手配は月額の中か、実費か
④ 費用の切り分け 初期費用・月額・実費の境目がどこに引かれているか

①は範囲そのものです。義務的支援は全てを行う必要があり、支援計画には全ての義務的支援を記載しなければならないとされています(技能実習2号等から在留資格を変更した場合などで、客観的状況に照らして明らかに不要な支援は除くとされています)。加えて、任意的支援も支援計画に記載した場合には支援義務が生じます。「手厚い」提案は、そのぶん実施の約束が増えます。範囲が広い見積が割高なのではなく、約束している仕事の量が違うと読むのが実態に合います。

②は法定の下限が決まっている項目です。定期的な面談は3か月に1回以上とされ、面談対象者が同意している場合はオンライン面談も可能とされています。ただし、同意がない場合や対面を希望された場合は対面で実施する必要があります。遠方の事業所へ毎回訪問する前提の見積と、原則オンラインの見積では、同じ「月額」でも原価が変わります。面談の中身は定期面談で何を聞くかに書きました。

③も制度側に手がかりがあります。事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談又は苦情への対応、定期的な面談の4つは、外国人が十分に理解することができる言語により実施することが求められています。運用要領別冊は、翻訳機の活用も場合によっては可能としつつ、込み入った相談・苦情対応などでは通訳人の介在が不可欠と考えられる、とも書いています。何語に対応できるかは機関ごとに違うので、ここは金額に素直に出ます。

④は切り分けです。送迎に要する実費(交通費、燃料代、道路通行料など)は義務的支援に要する費用として機関側が負担することとされ、通院や入院に同行する際の支援担当者の交通費や日当も同様とされています。これらを月額に織り込むか、都度の実費請求にするかは各社の設計です。どちらが正しいという話ではなく、どちらなのかを確かめるところです。

同じ「月額」でも、含まれる仕事の量が違う

ここまでを1枚にすると、見積は3つの層に分かれます。

支援の委託費を3つの層(委託費に含まれる支援・実費・自社に残る仕事)に分けて読む図

見落とされやすいのは層3です。支援計画の全部の実施を委託した場合でも、支援計画の作成、本人への交付と説明、定期届出、帳簿・文書の備付けは受入れ企業の側に残ります(詳しくは支援を委託していても、自社に残る仕事)。この層は見積書に出てきませんが、社内の工数として毎年かかります。月額だけを横に並べるより、層1から層3までを足して比べるほうが実際に近くなります。

初期費用の差は、入国前後に集中する支援で説明がつくことが多いものです。①事前ガイダンスと④生活オリエンテーションは、上の表のとおり時間の目安が示されているぶん、見積にも量として現れやすい部分です。

金額の前に確かめておく3つ

金額を見比べる前に、契約書側で確かめておくと後が楽になる点が3つあります。

確かめること なぜ効くか
契約期間と、解約したいときの条件 内製化や委託先の見直しを考えるときに、動ける時期がここで決まります
範囲外の対応が出たときの追加費用の扱い 範囲を決めても、想定外の対応は出てきます。単価と決め方が先にあると話が早くなります
支援の記録と帳簿の受け渡し 支援に要した費用の額及び内訳を含む帳簿の備付けは会社の義務です。記録が戻ってくる形かを見ます

一部委託を検討している場合は、もう1つ。定期的な面談の実施と行政機関への通報は、一部委託では他の者に委託できないとされています。委託の範囲を支援計画に明示する必要もあるので、契約書と支援計画がずれない形にしておくと、あとの届出が素直に進みます。

まとめ:手元の見積を、10項目に並べ直すところから

  • 委託費の公的な相場表は確認できていない。読む軸は「相場」ではなく「内訳と支援内容」
  • 制度は、金額が人数・事業所数・場所等で異なり得ることと、複数から見積りをとって確認することを前提にしている
  • 差が生まれるのは、支援の範囲・面談の方法・言語対応・費用の切り分けの4か所に集まりやすい
  • 見積は3つの層で読む。層3(自社に残る仕事)は見積に出てこないが、毎年かかる
  • 金額の前に、契約期間と解約条件・範囲外の追加費用・記録の受け渡しを確かめておく

最初の一手は、手元の見積を1枚の紙に写して、10項目の右に行番号を書き込んでみることです。空欄が残った項目と、どの項目にも当たらなかった行。この2つが、そのまま質問リストになります。見積を出した機関にそのままお尋ねいただいて構いません。範囲を確かめる質問は、双方にとってありがたい質問です。

そのうえで、どこまでを委託し、どこからを自社で持つのが自然かは、受け入れ人数・分野・事業所の数と場所・社内に置ける担当者で答えが変わります。ここは一般論では決まらないところなので、御社の状況を伺ったうえでお伝えします。見立ての軸は内製化に向く会社、向かない会社の見分け方、年間の実額の出し方は外国人材の支援費用、外注と内製でいくら違うのかに書きました。ご相談はお問い合わせからどうぞ。私たちの内製化コンサルティングも、この並べ直しから始めます。委託を続けたまま範囲だけを見直す形でも構いません。

なお、本記事の内容は公表されている情報にもとづく目安です。制度の要件は改正されることがありますので、最新の要件は出入国在留管理庁の公表内容をご確認ください。

出典

2026年9月5日に確認。

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