制度を知る

特定技能で人を受け入れるとき、企業が最初にやること

特定技能で人を受け入れるとき、企業が最初にやること

「特定技能で外国人を採用したい」というご相談をいただくとき、最初に出てくる質問はたいてい同じです。どこで人を探せばいいのか、費用はいくらかかるのか、いつから働いてもらえるのか。

ただ、私たちが実務のうえで最初にご一緒するのは、そのどれでもありません。受け入れる前に、自社が「何をする立場になるのか」を決めるところからです。特定技能は、人を採用したら終わりの制度ではなく、受け入れた後に企業側が続けて行う義務がセットになっています。ここを決めずに人だけ先に決まると、入国の直前になって体制が間に合わない、という詰まり方をします。

この記事では、制度の条文を並べるのではなく、受け入れを決めた企業が実際に着手する順番で整理します。

最初にやることは「人を探すこと」ではない

特定技能1号で外国人を受け入れる企業は、出入国在留管理庁の用語で「受入れ機関(特定技能所属機関)」と呼ばれます。この立場になると、次の3つが同時に発生します。

  1. 特定技能雇用契約の基準を満たすこと
  2. 1号特定技能外国人支援計画をつくり、入管への申請時に提出すること
  3. 受け入れた後、継続して届出を行うこと

出入国在留管理庁は、雇用契約について「労働関係法令を遵守していることはもちろんのこと、特定技能雇用契約に関する基準を満たしている必要があります」としています(出入国在留管理庁「受入れ機関の方」)。

つまり、賃金や労働時間が日本人と同等かといった契約の中身が、在留資格の審査対象になります。求人を出す前に、自社の給与テーブルでこの条件を満たせるかを先に確かめておくほうが、後戻りが少なくて済みます。

支援計画は「書類」ではなく「体制の設計図」

3つのうち、最も準備に時間がかかるのが支援計画です。出入国在留管理庁は「特定技能1号を受け入れる場合は、1号特定技能外国人支援計画を作成し、入管への申請時に提出する必要があります」としています(同上)。

支援計画は自由記述の作文ではありません。行うべき支援の項目が決まっており、義務的支援として次の10項目が挙げられています。

# 義務的支援の項目
1 事前ガイダンス
2 出入国する際の送迎
3 住居確保・生活に必要な契約支援
4 生活オリエンテーション
5 公的手続等への同行
6 日本語学習の機会の提供
7 相談・苦情への対応
8 日本人との交流促進
9 転職支援(人員整理等の場合)
10 定期的な面談・行政機関への通報

出典:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」

この10項目を上から読むと、**必要になる社内の手当てがそのまま見えてきます。**送迎は誰が行くのか、住居の契約や保証人はどうするのか、相談・苦情に本人が理解できる言語で対応できるのか。

支援計画づくりは、書類を埋める作業ではなく、この10項目を自社で回せるかどうかを1つずつ確かめる作業です。私たちが時間をかけるのも、たいていこの部分です。

なかでも生活オリエンテーションは、受け入れ直後の定着を左右する部分です。

自社で支援するか、登録支援機関に委託するか

10項目を眺めたうえで出てくるのが、「これを全部自社でやるのか」という問いです。

制度上は、どちらも選べます。出入国在留管理庁は「支援の実施については所属機関で行うほか、登録支援機関にその全部の実施を委託することができます」としています(「受入れ機関の方」)。

そして委託した場合の効果が、実務上は重要です。

「登録支援機関に支援計画の全部の実施を委託した場合は、受入れ機関が満たすべき支援体制の基準を満たしたものとみなされます。」 (出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」)

つまり、**自社に支援体制がまだ無い段階では、全部委託が体制基準を満たす近道になります。**初めての受け入れで委託から入る企業が多いのは、この仕組みのためです。

自社で支援する 登録支援機関に全部委託する
支援体制の基準 自社で満たす必要がある 委託により満たしたものとみなされる
費用 社内の人件費として発生 委託費として発生
ノウハウ 社内に残る 委託先に蓄積される
向く場面 受け入れ人数が増え、社内に担当が置ける段階 初めての受け入れ、担当を専任にできない段階

一方で、委託は永続的な前提ではありません。受け入れが続き、社内に担当が育ってくると、「支援そのものを自社で回す」判断が現実的になります。私たちが内製化の支援を事業にしているのは、この段階で相談先が無くなる会社を実際に見てきたためです。

ただし、**いきなり全部を自社に移す必要はありません。**受け入れが数名で担当を専任にできない段階なら、委託を続けたほうがうまくいきます。まず1つの業務から社内に持つ——たとえば定期面談の記録だけを自社で取り始める——という始め方で十分です。そこから増やしていけば、10項目のどれも形だけにならずに済みます。

なお、登録支援機関は支援計画の全部を実施できる必要があるとされ、一部だけ請け負う形の登録は認められていません(同上)。

分野ごとの協議会への加入も必要になる

見落とされやすいのが、分野別協議会です。出入国在留管理庁は「特定技能所属機関は在留諸申請の前に必ず構成員となる必要があります」としています(「特定技能制度に関するQ&A」)。

加入の窓口・手続き・必要書類は分野ごとに異なります。分野ごとに所管省庁が違うためです。自社の分野の所管省庁のページで、加入時期と必要書類を先に確認しておくことをおすすめします。たとえば介護分野では、入会証明書に**有効期間(初回は1年間、更新後は4年間)**が設けられています(厚生労働省)。更新を忘れると次の申請で止まります。初回よりも、2回目以降の申請に効いてくる部分です。

受け入れた後に続く事務

在留資格が下りて働き始めたら終わり、ではありません。受け入れ後には、出入国在留管理庁への届出が続きます。定期届出は年に1回です(制度改正により四半期ごとから年1回へ変わりました。対象期間は毎年4月1日から翌年3月31日まで。出入国在留管理庁「特定技能所属機関・登録支援機関による届出」)。加えて、雇用契約の変更などの際は、その都度の届出が必要です。

定期と随時、2種類の届出を誰が担当するのか決めていないというのが、受け入れ後にいちばん起きやすい詰まりです。委託している場合も、届出のうち受入れ機関自身が行うものは残ります。

まとめ:着手の順番

  1. 自社の雇用条件で、特定技能雇用契約の基準を満たせるかを確かめる
  2. 義務的支援10項目を読み、自社で回せる項目と回せない項目を分ける
  3. 分けた結果を見て、全部委託か自社支援かを決める
  4. 分野別協議会の加入手続きを、所管省庁のページで確認する
  5. 受け入れ後の届出を誰が担当するかを、受け入れ前に決めておく

人探しは、この5つの見通しが立ってからで十分間に合います。**順番どおりに進めた会社は、入国の直前がいちばん静かです。**続きは入国から最初の1か月にやることへ。

この5つのうち、3番目(全部委託か自社支援か)だけは一般論で答えが出ません。受け入れ人数・分野・社内に誰を置けるかで変わるためです。そこはお話を伺ったうえで、御社の場合どうかをお伝えします。 私たちは登録支援機関として、10項目を「自社で回せるもの」と「任せたほうがよいもの」に仕分けるところからお手伝いしています。受入支援の内容もあわせてご覧ください。

なお、本記事の内容は公表されている情報にもとづく目安です。制度の要件は改正されることがありますので、最新の要件は出入国在留管理庁の公表内容をご確認ください。

出典

お問い合わせ →

まずは、お話を聞かせてください。

現状を伺ったうえで、必要な選択肢だけをお伝えします。

お問い合わせ →