内製化とコスト

特定技能の受入れ費用、初期と毎月に分ける

特定技能の受入れ費用、初期と毎月に分ける

「特定技能で1人受け入れると、全部でいくらかかりますか」——最初のご相談でいちばん多い質問です。総額を一言でお答えするのは難しいのですが、費用を時間で分けると、自社の数字として書き出せます。入国までに一度だけ出ていくお金と、在籍している間ずっと出ていくお金は、性質も、見直し方も違うからです。この記事では2026年9月18日時点で公表されている内容をもとに、費用の地図を1枚に描きます。相場の金額は書きません(公的な統計が無いためです)。代わりに、項目の並べ方と見積りの読み方を書きます。

費用は「入国まで」と「入国後」に分けると見える

同じ「受入れ費用」でも、2つは経営の中での位置づけが違います。

入国までの費用 入国後の費用
出方 1人につき原則1回 在籍している間、毎月・毎年
効いてくる場所 採用時の資金繰り(いつまでにいくら用意するか) 1人あたりの年間コスト(人数に比例して増える)
見直し方 相見積りと、社内でやる範囲の切り分け 誰がその仕事をやるかの設計

分けると何が良いかというと、削れる場所が違うことが分かるからです。入国までの費用は項目が決まっていて、削る余地はそれほど大きくありません。一方、毎月の費用は「誰がその支援をやるか」で形が変わります。だから内製化の話は、いつも後者の側から始まります。

もう1つ、動かせない前提があります。1号特定技能外国人の支援に要する費用は、直接にも間接にも本人に負担させないことが定められています(特定技能基準省令、出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」令和7年4月)。この「支援に要する費用」には、事前ガイダンス・生活オリエンテーション・相談苦情対応・定期面談に係る通訳費等、出入国時の送迎に要する交通費等、そして登録支援機関への委託費用が含まれると明記されています。住宅の賃貸料などの実費を必要な限度で本人に負担させることは妨げられていません。つまり、見積りに出てくる支援関係の金額は、基本的に会社が持つ前提で読みます。

入国までにかかる項目

海外から招へいする場合を想定して並べます。金額は分野・地域・採用の経路で変わるので、まず項目の抜けを無くすことから始めます。

項目 中身 押さえどころ
試験 技能試験、日本語試験(JFT-Basic/JLPT等)の受験料 本人が受験するもの。会社が負担するかは契約で決める
渡航・査証 航空券、在外公館での査証申請に伴う費用 入国時の送迎に要する交通費等は支援費用として会社負担
健康診断 医師の診断。新規入国は申請日から遡って3か月以内 国内で在留資格を変更する場合は1年以内の受診で可
住居 敷金・礼金・仲介手数料、家具家電、初期の生活用品 賃貸料などの実費は必要な限度で本人負担も可
書類の作成・申請 在留資格認定証明書の交付申請一式 行政書士等に依頼する場合は、その報酬が別に生じる
分野固有の準備 協議会への加入、分野によっては登録法人への加入 加入の手続きと費用の有無は分野ごとに異なる
採用の経路 人材紹介会社を利用する場合は、その契約に応じた手数料 本人・親族からの保証金徴収や違約金契約は禁止されている

最後の行は費用の話であると同時に、確認事項でもあります。保証金・違約金契約が違法で禁止されていることは、事前ガイダンスで本人に説明し、徴収が無いことを確認するよう運用要領に定められています。採用の入口で確かめておけば、後から出てくる話ではなくなります。

なお、私たちが行うのは登録支援機関としての支援と内製化のご支援で、書類は作成のお手伝いまでです。判断が必要な場面では行政書士等と連携してご案内します。

毎月・毎年かかる項目

こちらが「1人あたり年間いくら」を決める側です。

項目 発生の仕方 見直しの手がかり
支援の委託費、または自社で支援する場合の人件費 毎月。委託は人数に比例、自社は担当者の時間 委託の範囲と、社内に残す仕事の切り分け
住居 毎月。会社が借り上げる場合は負担分が固定費になる 契約名義と負担割合を最初に決めておく
日本語学習の支援 教材費・講座費など。設計次第で幅が出る 何を会社が持つかを支援計画と揃える
健康診断 雇入れ時と、雇用期間中の定期健康診断 労働安全衛生法に定める健診の適切な実施が求められる
在留期間の更新 更新のたび。手数料と、書類作成にかかる時間 更新月から逆算した年間の段取り
分野固有の負担金 分野によっては毎月発生する(後述) 分野の所管省庁・登録法人の公表内容

更新の手数料には動きがあります。出入国在留管理庁によると、2026年10月1日以後の申請分から、在留資格の変更・在留期間の更新の手数料が、許可に係る在留期間の区分に応じた額に改定される予定です(改正入管法施行令)。公表されている額は、3月以下10,000円、3月超6月以下15,000円、6月超1年未満21,000円、1年27,000円などの区分です。窓口申請とオンライン申請で額は同じで、納付方法が異なります(窓口は収入印紙、オンラインはコンビニ決済または銀行決済で決済手数料が加算されます)。更新のたびに発生する費用なので、年間コストの表に1行足しておくと、来年の予算が崩れません。

委託費そのものの金額差がどこから生まれるかは、登録支援機関の委託費、金額差はどこから生まれるかで、義務的支援10項目に並べ直して読む手順を書いています。

分野で変わるところ

分野別協議会への加入は、受入れ機関に義務付けられています(出入国在留管理庁「特定技能制度及び育成就労制度の分野別協議会について」)。加えて建設分野と工業製品製造業分野では、分野所管省庁の登録を受けた法人への加入も必要とされています。この登録法人に関わる費用が、他の分野には無い項目として乗ります。

建設分野の場合、一般社団法人建設技能人材機構(JAC)の公表では、受入負担金が1号特定技能外国人1人あたり月額12,500円(年額15万円)、賛助会員として直接加入する建設企業の年会費が24万円です(2026年9月18日確認)。正会員団体を通じて加入する場合の会費は団体ごとに異なります。建設キャリアアップシステムの登録料も含めた全体像は建設分野の受入負担金とJAC、費用の全体像にまとめました。

介護・外食・飲食料品製造・宿泊・ビルクリーニングなど他の分野では、この登録法人の仕組みはありません。加入の手続きと提出書類は分野ごとに違うので、自社の分野の協議会のページを1回だけ開いて、必要書類と費用の有無をメモしておくと、以後の見積りが安定します。

見積りを比べるときに見る3点

複数の見積りが並んだときは、金額の大小より先に、次の3点を同じ物差しで見ます。他社同士を比べるのではなく、法定の支援項目と照らして読むのがコツです。

# 見るところ 具体的な問い
1 何が含まれるか 義務的支援10項目のうち、どれが基本料金の中にあるか
2 回数と形 定期面談は年何回か、対面か遠隔か、通訳は付くか
3 追加費用の条件 住居探しの同行、更新申請の書類支援、緊急対応はどう扱われるか

支援の委託契約を結ぶにあたっては、支援に要する費用の額と内訳を明示することが求められており、明示しないことは登録支援機関の登録拒否事由とされています。つまり3点とも、手元の契約書と見積書の中に答えがあるはずのものです。運用要領も、複数の登録支援機関から見積りをとり、支援内容を十分に確認したうえで契約するよう促しています。

ここまで並べた項目に自社の数字を入れると、「1人あたり年間いくら」が1枚になります。そこから先、どこまでを外に出し、どこから自社で持つかは、受入れ人数・分野・社内に誰を置けるかで答えが変わります。外注と内製の構造の違いは外注と内製でいくら違うのか、自社支援に移る場合の入口の条件は支援を委託せず自社で行う要件に書きました。御社の場合にどの順番で進めるかは、お話を伺ったうえでお伝えします。向かない段階なら、向かないと申し上げます。

まとめ:1人あたり年間いくらを、1枚に書き出す

  • 費用は「入国まで(1回)」と「入国後(毎月・毎年)」に分けると、削れる場所が見える
  • 支援に要する費用は、委託費を含めて本人に負担させない。会社が持つ前提で読む
  • 入国までは項目の抜けを無くすことが先。保証金・違約金の確認も同じ場面で行う
  • 2026年10月1日以後の申請分から、在留期間の更新等の手数料が区分に応じた額へ改定予定
  • 分野固有の負担は建設・工業製品製造業に。建設は受入負担金が月額12,500円
  • 見積りは「含まれる範囲・回数・追加費用の条件」の3点で、法定の支援項目と照らして読む

最初の一手は、この記事の項目を縦に並べた表を作り、自社の分野の欄だけ埋めてみることです。空欄が残ったところが、次に確認すべきことです。

本記事の内容は公表情報にもとづく目安です。金額や要件は改定されることがありますので、最新の要件は出入国在留管理庁および各分野の所管省庁の公表内容をご確認ください。

出典

2026年9月18日に確認。

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