内製化とコスト

支援を委託せず自社で行う要件、過去2年の実績とは

支援を委託せず自社で行う要件、過去2年の実績とは

「支援を自社でやるには過去2年の実績が要ると聞いたのですが、うちは当てはまるのでしょうか」——内製化のご相談で、費用の話より先にいただくことのある質問です。この「過去2年」は支援体制の基準の入口にあたる第1号です。この記事では、第1号と続く条件を、自社に当てはまるかを1つずつ確かめられるリストへ置き直します。2026年9月時点で公表されている内容にもとづく目安ですので、最新の要件は出入国在留管理庁の公表内容をご確認ください。

自社で行うかどうかは、費用の前に「支援体制の基準」で決まる

受入れ企業(特定技能所属機関)は、1号特定技能外国人支援計画を適正に実施できる体制が、法務省令の基準に適合していることを求められます(入管法第2条の5第3項、特定技能基準省令第2条第2項)。

一方で、支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託した場合は、この基準に適合しているとみなされます(運用要領 第2章第2節)。一部でも自社で行うなら、その時点から基準は自社で満たします。

私たち自身も登録支援機関(登録番号 25登-011704)として支援を受託していますが、内製化のご相談も同じ基準表で見ます。満たせる欄がどれだけ埋まっているかという話です。

入口の条件——過去2年の受入れ実績、または生活相談業務の経験

基準の第1号は、次のイ・ロ・ハのいずれかに該当することを求めます。どの経路でも、支援責任者と、事業所ごとに1名以上の支援担当者の選任がセットです(責任者は担当者を兼ねられます)。この記事の表はいずれも現行の要件で、令和9年4月1日からの変更は後述します。

経路 求められること 確認対象の書類(参考様式)
イ 過去2年間に中長期在留者の受入れまたは管理を適正に行った実績があり、役員・職員から支援責任者と支援担当者を選任 受け入れた中長期在留者リスト(第1-11-2号)
ロ 過去2年間に中長期在留者の生活相談業務に従事した経験のある役員・職員から、支援責任者と支援担当者を選任 生活相談業務を行った中長期在留者リスト(第1-11-3号)、支援責任者・支援担当者の履歴書(第1-20号・第1-22号)
ハ イ・ロと同程度に支援業務を適正に実施できると認められる者から選任 第1号ハに該当することの説明書と、その立証資料

3経路とも、共通で特定技能所属機関概要書(参考様式第1-11-1号)が必要です。

ここでいう中長期在留者は、入管法別表第1の1の表・2の表・5の表の在留資格のうち、収入を伴う事業の運営または報酬を受ける活動ができるものに限られます。

「適正に行った」とは、少なくとも1名以上の受入れまたは管理を行い、その間、入管法・技能実習法・労働関係法令を守っていることを指します。賃金の不払、違約金契約、技能実習での改善命令・改善勧告があると該当しません。

心強い読み方を1つ。運用要領は、1号特定技能外国人を雇用した実績と、委託によらず自社支援で義務的支援を適正に実施した実績を、それぞれ受入れまたは管理を行ったものと認めると明記しています。全部委託の期間も、適正に受け入れてきたなら認められます(技能実習から移行した会社も同じ)。

なお、在籍者が設立者本人だけという法人(一人親方・個人事業主も同様)は、第三者の受入れ実績とは認められず、要件の充足には他に外国人労働者の雇用等が必要とされています。役員本人に生活相談業務の経験があればロも見られます。

実績が無くても、道は3本ある

イで埋まらないときも、道は閉じません。次の順で見ると進む先が見つかります。

1つ目はロの経路です。「生活相談業務」とは、生活に必要な契約に係る支援、生活オリエンテーション、定期的な面談として行う内容などを指します。業務として行われたことが必要で、個人的な相談やボランティアは実績になりません。総務や人事で外国人従業員の相談に応じてきた方が候補です。

2つ目はハの経路です。イ・ロに該当しなくても、適正な受入れ実績のある機関と同程度に支援業務を実施でき、かつ日本人労働者等を適正・適切に雇用してきた実績があり、責任をもって支援を行うと見込まれる場合が対象です。労働基準監督署からの是正勧告がないことが前提です。該当するかは、雇用管理や生活相談の実績などを考慮して個別に判断されます。

3つ目は、時間を味方につける進め方です。全部委託のまま受け入れを適正に重ねれば、イの実績はそのあいだに積み上がります。委託中に社内でできることは委託していても自社に残る仕事にまとめました。

なお、ロで満たした場合、受け入れまでに担当を変えるなら新しい方も要件に該当します。候補は2名で見ておくと安心です。

第1号のあとに続く、6つの欄

基準は第1号で終わりません。第2号から第7号を表にすると確認リストになります。

号 見られること 自社で確かめること
二 本人が十分に理解できる言語で支援を行える体制 通訳を職員として雇う必要はなく、必要なときに委託して確保できれば足ります
三 支援の状況に係る文書を作成し、事業所に契約終了日から1年以上備え置くこと 支援実施体制・支援の委託契約・支援対象者・支援の実施の4種の管理簿がそろうか
四 支援責任者・支援担当者が中立に実施できる立場であり、かつ一定の欠格事由に該当しないこと 組織図の縦のライン(代表取締役、所属部署を監督する長など)に乗っていないか
五 契約締結日前5年以内および締結日以後に、支援を怠ったことがないこと 過去の支援の実施状況
六 本人と、その人を監督する立場にある者の双方と定期的な面談ができる体制 3か月に1回以上の頻度。オンライン会議システム等の活用も含みます
七 分野ごとに法務大臣が告示で定める基準 自社の分野の運用要領(分野別)を1度確認する

ここで混ざりやすいのが、非自発的離職者・行方不明者を発生させていないこと、支援に要する費用を本人に負担させないこと(順に第1項第2号・第3号・第8号)です。これらは支援体制ではなく「特定技能雇用契約の適正な履行の確保」の側の基準で、委託しても自社で行っても受入れ機関自身が満たすものです。内製化で増える条件ではなく、切り分けると確認の範囲は狭くなります。そのうえで、いちばん候補者を絞るのが四の中立性です。縦のラインを外して候補を挙げ直せば、そこから先は確認作業として進みます。

もう1つ、いま織り込んでおけることがあります。出入国在留管理庁は、この支援体制の要件の改正を公表しています。令和9年(2027年)4月1日から施行される予定です。自社支援では、支援責任者と支援担当者を事業所ごとに常勤の役員または職員から1人ずつ以上選ぶこと(支援業務に従事できるのはこの両者に限られます)、支援責任者への養成講習、支援担当者1人当たり50人未満が主な内容です。講習には、当分の間は修了していなくてよい経過措置があります。いま候補を挙げる段階で常勤かどうかを見ておけば、そのまま施行日を迎えられます。詳しくは支援責任者と支援担当者、社内で決める順番へ。

自社に当てはめて確かめる順番

上から順に埋めると手戻りが少なくなります。

順 確かめること 今日できること
① 過去2年の受入れ これまで雇用した就労系在留資格の方を、在留資格・期間つきで一覧にする
② 人 支援責任者・支援担当者の候補を実名で書き、イ・ロ・ハのどれに乗るか当てる
③ 中立性 その候補が組織図の縦のラインに乗っていないか確認する
④ 記録と言語 支援記録の置き場所と、通訳を確保する当てを決める

一覧が埋まったら、切り替えの判断はその先です。費用の比較は登録支援機関の委託費、金額差はどこから生まれるか、段取りは外注から自社支援へ切り替える手順にあります。

どの経路に乗せるかは、会社の規模と分野で答えが変わります。ここは個別にご相談ください。私たちの内製化コンサルティングは、外注している支援業務の棚卸しから始まり、この確認リストを一緒に埋めるところまでを含みます。年間の支援費用を削減できた事例もありますが、結果は体制と規模により異なり、同じ成果をお約束するものではありません。書類は社内で作成できるようにするための手順と様式の整理、記載内容の作成支援までを行い、判断が要る場面は行政書士等と連携してご案内します。

まとめ:過去2年の受入れを、1枚に書き出すところから

  • 支援の全部を登録支援機関に委託していれば基準に適合するとみなされる。一部でも自社で行うなら自社で満たす
  • 入口の第1号は、過去2年の受入れ実績(イ)・生活相談業務の経験(ロ)・同程度と認められる場合(ハ)の3経路
  • 全部委託の期間も、受け入れを適正に続けていればイの実績として数えられる
  • 第2号から第7号は、言語・記録・中立性・不履行・面談・分野別。非自発的離職者や行方不明者は別の側の基準
  • この要件は令和9年4月1日から改正が施行される予定。常勤・事業所ごと・支援担当者1人当たり50人未満を、いまの人選に織り込める

次の一手は、これまで雇用した就労系在留資格の方を、在留資格と期間つきで1枚に書き出すことです。その1枚がイの材料になり、埋まらなければロやハを見に行けばいい。迷われたら、その1枚を持ってお問い合わせください。

出典

  • 出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(表紙 令和8年8月/2026年8月20日更新) 第5章第2節 https://www.moj.go.jp/isa/content/001468647.pdf
  • 特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(特定技能基準省令)第2条 ※条文は上記運用要領の【関係規定】に掲載
  • 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の改正について」 https://www.moj.go.jp/isa/10_00263.html
  • 同「1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の主な改正点(令和9年4月1日から施行)」 https://www.moj.go.jp/isa/content/001468625.pdf
  • 上記はいずれも2026年9月7日に確認。
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